彩度beige
そこからは、私と瀧澤さん、及河さんとの3人で、打ち合わせを進めていった。

企画書に書かれていた内容の確認や補足の説明を受けた後、私は、わからなかったことについていくつか質問をさせてもらった。

それだけで、時間がずいぶん経ったけど、一葉くんはまだこの場に戻ってきていない。

けれど、ここからの話は一葉くんも一緒の方がいいだろう・・・ということで、一旦休憩をする流れになった。

「慣れない場所で水谷さんも疲れたでしょう。ちょっとコーヒーでも飲んで休憩しましょうよ」

「そうですね。そうしましょう」

「はい・・・、ありがとうございます」

瀧澤さんがにこりと笑い、及河さんがコーヒーを淹れてきてくれた。

及河さんの、その姿がやけに絵になって。やっぱり、彼は執事が似合いそうだなと思ってしまった。


(ふう・・・、とにもかくにも、やっぱり慣れない仕事は疲れてしまう・・・)


今や、パン屋での接客仕事が日常になっているために、こういう仕事は余計に「慣れない」と感じることだった。

いただいたコーヒーをひと口飲んで、私は小さく伸びをする。

久しぶりに肩が凝った感じもするし・・・と思っていると、ふっと、瀧澤さんの姿が目に入る。


(ーーー綺麗だな・・・)


コーヒーを飲んでいる姿も美しい。

姿勢もすごくいいんだな。

瀧澤さんの全てを眩しく感じていると、私は、先ほどの光景を思い出す。


(瀧澤さん・・・、一葉くんのことを『玲央くん』って、下の名前で呼んでいた。2人はどういう関係なんだろう・・・)


あの時、近くにいた及河さんが、驚いていた様子はなかったと思う。

ということは、2人が親しい間柄だと、ホテル内では周知の事実なのだろう。


(・・・ま、まさか・・・、付き合っているとかではないよね・・・?)


多分、瀧澤さんは私や一葉くんよりいくつか年上だと思う。

学生時代からの先輩後輩・・・、という可能性だってありうるし、親族の可能性だってあるとは思う。

だけど・・・、いずれにしても、一葉くんはあの時ちょっと照れくさそうで・・・、少しだけ、顔が赤くなっていた。

やっぱり彼女?憧れの年上女性とか?

瀧澤さんは女性としてかなり魅力的で仕事もできる感じだし、一葉くんの信頼も厚いみたいだし・・・。

「・・・・・・」


(・・・ダ、ダメだダメだ・・・、考えれば考えるほど、したくない想像をしてしまう・・・)


それに今、私はここに仕事に来ている。

余計なことは考えないようにしなければ・・・。

と、気持ちを整えようとしていると、右斜め前に座っている及河さんの、やけに熱い視線を感じた。


(な、なんだろう・・・)


気のせいではないような。

絶対に見られている気がするんだけど・・・と、かなりドキドキしていると、「水谷さん」と、及河さんに声をかけられた。

「は、はい!」

「休憩時間ということで、いくつか質問をさせていただきたいのですがよろしいですか」

「あ・・・、はいっ。大丈夫です」

「・・・では、早速。支配人から、水谷さんは料理が好きだとお聞きしました。得意料理は何ですか」
< 66 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop