彩度beige
「ここまでで、その他に何か質問はありますか?」

瀧澤さんに問いかけられて、私は少し考えた後、「大丈夫です」と言葉を返した。

あれもこれも確認したし・・・、今のところはきっと大丈夫・・・、だと思う!

「わかりました。なにかありましたら、またいつでも聞いてくださいね」

「はい。ありがとうございます」

「では、長くなりましたので、今日はここまでにさせていただきます」

「お疲れさまでした」と言い合って、私たちは片づけをして席を立つ。

及河さんと瀧澤さんは、すぐに次の仕事に向かわなければいけないようで、「お先に失礼します」と、慌ただしく会議室を出ていった。


(・・・、よし。ひとまず、これで今日は無事終了・・・)


数時間の緊張感から解放されて、私はふーっと大きく息をはく。

と、一葉くんが小さく笑った。

「お疲れさま。疲れたでしょ」

「あっ・・・、うん。少し・・・」

「初めてだしね。ごめん、オレもずっといれればよかったんだけど・・・、いきなり及河さんと瀧澤さん相手に緊張したよな。2人とも、仕事できるしめちゃくちゃいい人なんだけど・・・、やっぱり、圧というか、なんとも言えないオーラがあるから」

一葉くんの言葉に頷いた。 

2人ともとてもいい人で、仕事ができる感じは私もわかる。

そして、なんとも言えないオーラというか・・・、私の場合、チェックされているようななんともいえない視線をずっと感じていたからだ。


(もちろん、勘違いの可能性もゼロではないけど・・・)


私の中では、「チェックされている」「見られている」という感覚は、間違いではない気がしてる。

支配人である一葉くんには、言いづらくて言えないけれど。

「・・・そうだ。一葉くんは時間平気なの?次の仕事の予定とか」

「・・・そうだな・・・、あと15分くらいは平気かな」

一葉くんは、腕時計を確認しながらそう言った。

その仕草がやけにかっこよく、私はこそっと胸を鳴らした。

「よかったら、ホテルの中案内しながらエントランスまで送ってく」

「えっ、いいの?支配人直々に」

「いや、そんな偉い感じでもないんだけど・・・、よかったら」

「うん!お願いします」


(嬉しい・・・、そして、すごい贅沢だ)


「Vulpecula」には、利用客として今まで一度しか来たことがなく(しかもレストランだけだったので)、知らない場所は多くある。

ゆえに、探検したい・・・、行ってみたい場所もたくさんあるのだ。

そこから、2人で会議室を後にして、客室棟に続く廊下を渡り、エレベーターで最上階へ。
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