彩度beige
会場内は、とてもたくさんの人でにぎわっていた。

入り口から、個性豊かな出展ブースがずらりと並び、どこもかしこもそれぞれの魅力を放ってる。

できるなら、一つ一つゆっくり見ていきたいけれど・・・、見れる時間は限られている。

明日も来る予定だけれど、今日しか出展していないブースもあるし、やはり、効率的に見ていくことが重要だ。

「・・・じゃあ、水谷さんが調べてくれたブースを中心に回ろうか。そこのお店から回ってく?」

「うん」

話しながら、企画に合いそうなブースを順に見て行った。

ネット上で見ていたものがリアルに視界に飛び込むと、「これか!」っという再発見の驚きと、それ以上の喜びがある。

「これ、ネットで見てすごく素敵だなって思ってたんだ。このテイストで、浴衣作ってもらったらかわいい気がして」

「確かに。色合いもめずらしいし・・・、いいな」

「ね」

並んでいる作品を見ていきながら、時々、出展者さんともお話をして。

それぞれの制作ストーリーを話してくれる作家さんもいて、色々興味深かった。

広い会場に多くのブース。

休憩もせずに回ったけれど、あっという間に時間は過ぎた。

「・・・とりあえず、チェックしてたところは全部見たかな」

「そうだね。ここも最後に見に行ったし・・・、うん、全部回ったと思う」

途中、私が今日着ているスカートを作った作家さんのブースもあったので、立ち寄って、少しお話をさせてもらった。

なんとなく、制作者はかわいらしい女性だろうとぼんやり想像していたけれど、実際は、ちょっといかつめの男性デザイナーさんで驚いた。

とはいえ、話してみると、「絵本が好き」「空と森と動物が好き」ということで、この洋服を生み出したのが、とてもしっくりきたのだけれど。


(・・・あの時・・・、『着てくれて嬉しい』『かわいい!』って、つくった本人に言ってもらって、私もすごく嬉しかったな・・・)


私はただ、かわいいなって思った服を買い、着ていたというだけだけど。

あんなふうに喜んでもらえるなんて・・・、私も嬉しい。

「・・・・・・」


(・・・そっか。きっとみんなそうなのか・・・)


作り手と、それを受け取り手にする人と。

そうやって、想いは順に繋がっていく。


(・・・私は・・・、これから、その間に立とうとしてるんだ)


改めて、素敵なことに携われるんだという思いが湧いた。

一葉くんに声をかけてもらった時は、やってみたい、役に立てたらいいなって、そんな気持ちばかりが大きかった気がするけれど。

ただ、それだけのことじゃなくーーー・・・。

生み出されたもの、それを届けて繋げていくこと。

それを形にできるよう、がんばろうって、もう一度私は心を決めた。








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