彩度beige
翌日の今日は、昨日出展していなかったブースから見ていくことにした。

2日連続で出展しているブースが多いようだけど、ちらほらと、2日目のみのブースもあって、昨日とは、見える景色がやや違う。

「さっき見た風鈴よかったね。企画のテイストにも合いそうだったし」

「そうだな・・・、音色もよかったし、あるとないとじゃ違うかも」

「うん」

話しながら、次に行くブースをマップで確認。

と、次の曲がり角を進んだ先にありそうだった。

「あっ、あそこだね・・・」

「haru」という名前の出展ブース。

HPはなかったし、SNSもやっていないようだったので、イベントサイトに載っている情報は最低限、ジャンルが「陶芸」だということだけだった。

趣味でつくっている感じかな。

そんなことを思いつつ、ブースの前まで近寄っていく。


(・・・わ・・・)


棚の上。お行儀よく並んだ器たち。

その中で、綺麗な青い器が目に留まる。

ーーー深くて、とても綺麗な青だ。

その青い器に吸い込まれていくように、私はさらに近寄って、並んだ器をじっと見る。


(ほんとに綺麗・・・)


平皿にしては、わりと重そうな感じの作品だった。

縁には模様が描かれていて、温かみがあり、かわいらしさも感じる器。

「素敵だね」と、一葉くんに伝えると、彼も「うん」と頷いて、並んだ器に見入っていた。

「・・・いいな。これ、企画に絶対使いたい」

「.Fes」を一緒に見て回る中、一葉くんが、「絶対」と口にしたのは初めてだった。

だけど、それはなにも不思議じゃなかった。

だって、とても惹きつけられる魅力を感じるものだから。

「これを作った人は・・・、今いないのかな。すぐにでも交渉したいけど」

「そうだね。ちょうど休憩中とか・・・」

ブースの奥や周囲には、作家さんらしき人はいなかった。

また後で来てみようか・・・、と話していると、後ろから、急いで駆け寄ってきた様子で「こんにちはー!」と声をかけられた。

「すいません!いらっしゃいませ!ちょうど席を外してて・・・」


(・・・ん・・・?)


後ろから聞こえてきた声に、どこか懐かしい感覚がした。

心の奥。記憶の扉が開かれる。

その記憶を辿っていくように、後ろをゆっくり振り返ると。
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