彩度beige
(・・・!)


「っ、緋山(ひやま)くん・・・!?」

振り返った視線の先。

そこにいたのは、高校時代の同級生だった。

夏らしく焼けた肌。ずいぶんと大人になっているけれど、キリリと整った顔立ちに、穏やかで爽やかな印象は、あの頃と全く変わっていなくって、私はすぐに気がついた。

「・・・え?・・・・・・え!?うわ!!もしかして・・・、水谷!?」

「う、うん!」

驚いた。本当に。

だって、まさか・・・、こんなところで高校時代の同級生と再会するなんて。

しかもーーー、緋山くんは、私が初めてお付き合いをした・・・初めての彼でもあったから。

「・・・っ」

「・・・・・・」

お互いに、驚いたままフリーズ状態。

「知り合い?」と、一葉くんに問いかけられて、私は、はっと我に返った。

「う、うん。高校時代の同級生で・・・」

「あ、緋山晴人(ひやまはると)です。いや、久しぶりすぎてすげぇびっくりなんだけど・・・。あ、えっと、こちらは・・・」

「・・・一葉玲央と申します。水谷さんとは・・・、今日は仕事で一緒に来てて」

「初めまして」「よろしくお願いします」と言いながら、一葉くんはさっと名刺を取り出して、緋山くんに手渡した。

緋山くんは受け取った名刺に目をやると、「え!?」と驚きの声を出す。

「『Vulpecula』って・・・、あの、すごい高級ホテルですよね。そこの社長で支配人!?めっちゃ若くないですか!?」

「・・・・・・」

一葉くんが言いにくそうにしたために、私は、同い年なのだと説明をした。

すると、緋山くんは「マジか!?」と言って、さらに驚いた様子を見せた。

「・・・てことは30歳・・・。30で『Vulpecula』の支配人って、すごいエリートコースじゃないですか!めちゃくちゃ仕事できるんだなあ・・・。すげえ」

緋山くんは、素直に感心しているようだった。

けれど、一葉くんは「いえ・・・」と言って、少し曇った顔をした。


(・・・あ・・・)


一葉くんは、いわゆるエリートコースで出世して、支配人になったわけじゃなく。

お兄さんが亡くなって、現会長であるお父さまに頼まれて、突然、支配人という立場になった。

もちろん、ちゃんと経営の勉強をして、現場での仕事も経験してから支配人になったわけだけど・・・、一般的な、エリートコースと言われる道を歩んできたわけじゃない。
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