彩度beige
跡取りとしてのプレッシャーはもちろんだけど・・・、後ろめたく感じるような・・・そんな気持ちもあるのだろうか。

年齢も、言われたくなかったかもしれない。

ひとまず話の流れを変えなくては・・・と、「ところで!」と、緋山くんに問いかける。

「ここにある器って、全部、緋山くんが作ったの?」

当然、これは確認したいことだった。

目の前に並んでいる、温かみのある器たち。

テイストは似ている気がするけれど・・・、全部、緋山くんの作品だろうか。

「うん、そう。ほんとはこのイベント用にもっと作りたかったんだけど・・・、俺一人だし、このぐらいが精一杯で」

どっしりとした、手に馴染みやすそうなマグカップ。

お茶碗のような器や平たいお皿。

ほとんどが青い色の器だけれど、白や茶色の器もいくつかあった。

「・・・そうなんだね・・・、でも、こんなに1人で作ってすごいと思う。さっき、一葉くんとも素敵な器だねって話してたんだよ」

「マジで?それは嬉しい」

そう言うと、緋山くんは心から嬉しそうな顔をした。

作家さんにこういう気持ちを伝えられるのは私も嬉しい。

「・・・でも、いつから陶芸やってたの?高校時代には興味もなさそうだったけど・・・」

高校時代の彼の姿を思い出す。

「だよなあ」と、緋山くんは苦笑い。

「あの頃はサッカー一筋だったしなー。それでスポーツ推薦で大学行って・・・。陶芸やるなんて、俺自身も全く思ってなかったわ」

「・・・、サッカー部・・・」

なぜか絶望的な雰囲気で、一葉くんがぼそっと呟いた。

緋山くんは特にそれを気にすることもなく、そのまま話を続けてく。

「大学時代に趣味で始めたんだよ。同じ大学で器つくってる子がいてさ。おもしろそうだなーって軽い気持ちで俺も始めて。そうしたら、まんまとハマったっていう」

「そうなんだ。同じ大学・・・って、サークル?芸術学部にいた子とか?」

「芸術学部にいた子だよ。当時の彼女だったんだけど・・・、って、元奥さんて言った方が正確か」

ははは、と苦笑いをする緋山くん。

その情報に、私は「え!」と驚いた。

「元奥さんて・・・、もしかして、緋山くんもバツイチなの?」

「え?・・・、『も』ってことは・・・、なんだ、水谷もバツイチか」


(・・・あっ!思わず・・・!)


「マジか」と言って、緋山くんがカラリと笑う。

その表情に、高校時代の彼の姿が重なった。
< 82 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop