彩度beige
「・・・な、なるほど・・・。いや、すげぇ光栄だし、企画の趣旨もわかったけど・・・、とはいえ『Vulpecula』にこんな素人の作品でいいのかなって、やっぱり不安があるっていうか・・・」

「・・・すごく素敵だと思います。オレは、一目で気に入りました」

「!」

一葉くんのきっぱりとした表現に、緋山くんは驚いていた。

同時に、「そ、そうですか・・・?」と言いながら、嬉しさを隠せない様子で照れている。

「緋山さんは、仕事として陶芸作家をされてるんですか?どこか店に置いてるとかは」

「や、そういう本格的なことは全然です。普段は会社員をしてるんで、それほど作れる時間もないし・・・、自分用とか友達の器ばっかり遊び程度に作ってて。こういうイベントに参加してみようって思うようになったのも、半年くらい前からです。だからもう・・・、ほんとそんなレベルのもので」

緋山くんは、遠慮がちに「ははっ」と笑った。

器作りは大好きなんだと思うけど、作品の自己評価はあまり高くはなさそうだった。

「・・・、充分です」

目の前に並ぶ器を見ながら、一葉くんが呟いた。

やっと探し当てた宝物を、見つめるような表情で。

「オレは『そんなレベル』だと思わないし、緋山さんの作品、すごく好きです」

「え!?・・・あっ・・・、ありがとうございます・・・!!」

頬を紅潮させて、頭を下げる緋山くん。

戸惑っているようだけど、同時に、とても喜んでいるのがよくわかる。


(・・・緋山くん、こんなふうに褒められたら嬉しいよね・・・。ここまで作品に対する『好き』を伝えられたのは、初めてなのかもしれないな・・・)


緋山くんの興奮だとか嬉しさが、こちらまで伝わってくるかのようだった。

そしてーーー、こんなに真っ直ぐ相手の作品を好きだと言える、一葉くんの素直さはすごいと思った。

「・・・それで・・・、大変だとは思いますが、もうひとつ、新しい作品を作っていただくことはできますか」

一葉くんが遠慮がちに尋ねると、緋山くんは聞き返すような顔をした。

一葉くんは、話を続ける。

「できれば・・・、この雰囲気で、このくらいの高さの小さな花瓶を作っていただきたいです。ホテルのエントランスに飾りたいので」

言いながら、一葉くんは手で10cmくらいの長さを示した。

緋山くんは、「エントランス・・・」と、驚くような顔をする。
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