彩度beige
「ああ・・・、大丈夫だよ。でも、ちょっとこの頃調子が悪くてね・・・。けほっ、けほっ。ああー・・・、僕は、生きているうちに衣緒ちゃんの幸せな話が聞けるかなあ・・・」

「!?」

「や、やだ大変!!大丈夫ですかおじいさま!!おまかせください、私が衣緒の幸せを、この手で全力サポートしますので!!」

真美は、自信ありげに自分の胸をどんっと叩いた。

「えっ!」と、真美の言葉に戸惑う私。

「お、おお・・・、そうかいそうかい。じゃあ、今日も頼んだよ。衣緒ちゃんにいいお相手を見つけておくれ」

「はい!!承知しましたー!!!」


(えええ~~~!!??)


「ちょっ、真美、勝手に・・・っ」

と、真美を阻止しようとしたけれど、見守るような笑顔の中島さんと目が合って、断りにくい気持ちになった。

私は結局、「わかった・・・」と了承の返事をしてしまう。

「・・・でも、中島さんにいい結果をお伝えできるかわかりませんけれど・・・」

「ははは、大丈夫大丈夫。結果はどうあれ、踏み出す一歩が大事だからね」

「・・・・・・」

人を好きになるのは怖い。

もし、好きになってそこから両想いになれたとしても、気持ちが離れていくのが怖い。

ましてーーー、好きな相手に「恥ずかしい」だなんて二度と思われたくはない。


(だけど・・・)


この先ずっと、恋愛をしたくないって言ったら嘘になる。

・・・怖いけど。

とてもとても怖いけど、人を好きになる幸せな気持ちは知ってるし、好きな人と一緒にいれる、幸せな時間も知っている。


(もう一度・・・、ああいう気持ちに私もなれる・・・・・・?)


また、傷つくかもしれない。

さらに深く傷ついて、立ち直れなくなるかもしれない。


(・・・でも)


もし、あの時よりも、素敵な恋ができるなら。

そんな恋ならしてみたいって、望みはもちろん持っているんだ。

未来はなにもわからない。

けれど・・・、だからこそ、とも言える。

ーーーちょっとだけ・・・、踏み出してみようかな。

そう思って顔を上げると、中島さんと真美の2人は、笑顔でピースサインを私に向けた。








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