彩度beige
『ふーん。けど、まだ彼氏じゃないんだ』

『うん。そうだね・・・』


(・・・・・・)


・・・あれ・・・・・・?

普通に返事をしたものの、私は、思いのほか動揺している自分に気がついた。

同じような文章を自分で送っておきながら、人から「まだ違うんだね」って言われると、なぜか不安になってくる。

今は彼氏じゃないけれど、これから彼氏になる期待。

私の中で、そんな期待が大きかったと思うけど・・・、ここからどうなっていくのかなんて、未来はなにもわからない。

『とりあえずわかった。じゃあ、またがんばるわ』

緋山くんはその言葉を最後にし、そのままメッセージ画面を閉じたようだった。

沈黙が空気で伝わったので、私もそのまま画面を閉じた。


(・・・、まだ、彼氏じゃない・・・)


改めて私は考える。

一葉くんから約束のような言葉をもらったけれど、まだ、はっきり言われた訳じゃない。

それに、この仕事が終わる頃に一葉くんの気持ちが変わっていたら・・・。

一葉くんと瀧澤さんとの関係も、恋人ではなさそうだけど・・・結局わかっていないまま。

そもそも、一葉くんは優しいし、二次元世界にいる人みたいにかっこよく、小説家でもあり経営者。家柄だって素晴らしく。

人付き合いは苦手そうだけど、これでモテないなんて思えない。

出会った時は渋々参加している感じだったけど、付き合いもあるのだろうし、飲み会は結構行くのかな。

「Vulpecula」のスタッフさんたちも、一葉くんを見て「イケメンだ!」って騒いでいたし・・・。

ーーー今までしていなかった心配が、突然どんどん湧いてくる。

それで頭がいっぱいで。

私は、緋山くんが最後に記した言葉の意味を、深く考えてはいなかった。









< 92 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop