彩度beige
3 グレーな気配
「・・・では、安斎さんはいいですね。あとは・・・、『みまつ』さんへの確認かな。水谷さん、もう一度連絡入れてみてください」

「わかりました」

忙しく過ぎる日々の中、気がつけば、季節は秋の終わりになっていた。

ここ最近、「Vulpecula」に来ることが日課のようになっている。

「作家と暮らす非日常」ーーーーー、この企画も、そろそろ大詰めに入ってきたところ。

色々なことがあったけど、一葉くんや及河さん、瀧澤さん・・・チームメンバーやその他沢山の人たちに助けてもらい、なんとかここまでやってきた。

本当に・・・、振り返ると、あっという間だったと思う。


(『.Fes』が終わってしばらくは、一葉くんのことで頭がいっぱいだったけど・・・、すぐにそれどころじゃない忙しさになっていったから、今は、恋愛はお休み状態なんだよね・・・)


一葉くんも当然ながら忙しく、時々私を「取材」と称して食事に誘ってくれることはあるけれど、「この仕事が終わったら話す」と言っていたこともあり、確信めいた話は今は何もしていない。

緋山くんからも時々食事の誘いがあるけれど・・・、毎回「仕事が忙しくて」という理由で断っている状態だ。

とにもかくにも、今は仕事が一番。

「スピカ」との仕事の両立は、もちろん大変なのだけど、居心地がよく、働き慣れた「スピカ」の仕事は、ある意味息抜きにもなっていた。


(オーナー夫妻は優しいし、常連さんとお話しするのも楽しくて・・・。ほんとに、『スピカ』の仕事があってよかった)


「作家と暮らす非日常」の企画の仕事は、慣れないことばかりだし、「Vulpecula」は私にとって、憧れであり、緊張する場所であることに今も変わりはなくて。

とにかくもう、言われたことをひたすらこなしている感じ。

緋山くんとの契約は、一葉くんがスムーズに進めてくれたけど、その他の作家さんたちとの契約は、基本的に私が担当なので、色々と時間もかかってしまった。

最初からうまくいかないこともあったし、途中で契約内容に折り合いがつかなくなってしまって、破談になることもあり・・・。

それでも、なんとか無事に10名以上の作家さんたちと契約できて、そこから何度も打ち合わせを重ねていって、作家さんには試作を重ねていただいて・・・、今、やっとゴールが見えてきた。

ここからは、瀧澤さんの知り合いのインテリアコーディネーターさんも企画に参加するそうだ。

本当に、もうすぐ形になっていく。

企画のための宿泊予約もそろそろはじめていくらしい。

あとはもう、この企画がうまくいくように、最後までがんばっていくだけだ。













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