日陰令嬢は常に姿を消して生活したい~あれ?私って転生者?陰から皆さんをお守りいたします。

 *

 ベッドの上で目を覚まし、ゆっくりと体を起こすと、右手が温かいことに気がついた。そっと視線を右手に移すと、誰かに手を握りしめられていた。

 ん?

 これは誰の手?

 更に視線を移動させると、その先にいたのはライナー様だった。ライナー様はベッドの上に突っ伏したまま寝息を立てている。

 どうしてライナー様がここに?

 それにこの手は?

 しっかりと握り絞められた手は、離してもらえそうにない。

 私はその状態のままどうしたら良いのかと、考えあぐねいていると、部屋をノックする音が聞こえてきた。それに反応してライナー様がゆっくりと体を起こした。そして私と視線が合うと、瞳がユラユラと揺れだした。

 泣いてしまわれる。

 そう思った私は、ライナー様を咄嗟に抱き寄せてしまった。

 私の胸の中で、ライナー様が息を呑む音が聞こえてくる。胸の中のライナー様の顔を想像するに、きっと赤い顔をされているのだろう。そんなライナー様の顔を思い浮かべて、クスリと声が漏れてしまう。すると私の胸に抱かれていたライナー様が落ち着かない様子でもぞもぞと動いた。

「アメリア、何故笑っているんだ?」

 ライナー様の声は少し震えていて、不安げな様子が伝わってくる。私はライナー様を安心させるため、そっとライナー様の頭を撫でた。小さな子供にするように、優しく優しく撫でてやると、私の胸に顔を埋めた状態のライナー様の耳が赤くなっていくのが見えた。

 この人、こんなに可愛らしい人だったかしら?

 いちいち反応が可愛くて、調子が狂ってしまう。

 今だって、どうしてこの人を抱きしめてしまったのだろう。

 困ったわ。

 このまま抱きしめたままでいる訳にもいかないし。

 どうしたものかしら?




< 57 / 104 >

この作品をシェア

pagetop