日陰令嬢は常に姿を消して生活したい~あれ?私って転生者?陰から皆さんをお守りいたします。
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熱に浮かされ目覚めてから、ライナー様への気持ちが少しずつ変わり始めていた。それがどうしてなのか自分でも分からない。それでもライナー様に歩み寄りたいと思うようになっていた。そう思うのはシャルルが熱で浮かされていた私の事を、教えてくれたからなのかもしれない。
ライナー様は熱に浮かされる私を、かいがいしく看病してくれていたらしい。これでもかと甘やかすように、つきっきりで看病していたとか……。私を見る目はとても甘くて、部屋にいられなかったとシャルルが言っていた。
私はそれが信じられなかったが、私が起きてからのライナー様の様子を見れば、それを信じざるを得なかった。
今朝も心配してやって来たライナー様は、私のいるベッドの端に腰を下ろすと瞳を細めた。令嬢達から氷の貴公子と呼ばれる氷の様に冷たい青い瞳が、優しく弧を描く。これが氷の貴公子?と思うほどの豹変ぶりである。その瞳は氷をも溶かす勢いで熱くて甘い。
「ライナー様……あの……おはようございます」
「ん?おはよう。アメリアは今日も可愛いね」
「かっ……可愛くは無いかと……髪もボサボサですし」
「そんな事は無い。可愛い……」
ライナー様は優しく呟く様に可愛いと言いながら、私の髪を一房掴むとそこに唇を落とした。その動作が流れるように美しく、思わず見とれてしまった。流石は私が書いた小説の登場人物なだけあって、存在感が半端ない。私は顔を真っ赤にさせながら俯いた。
「やっぱりアメリアは可愛い」
俯いていた私の頭頂部にライナー様がチュッとキスを落とす。それから立ち上がると名残惜しそうに私を見た。
「仕事に行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
「……待っていて……俺……頑張るから」
ライナー様から熱い視線を向けられ、私は唇を薄く開いたまま固まった。ライナー様が部屋から出て行ってもしばらく、私は固まったまま動く事が出来なかった。
ドキドキと高鳴る心臓の音だけが、私の鼓膜に響いていた。