敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 膝の上にいる香澄の背中から腰にかけて宥めるように煽るように神代の大きな手のひらが撫でる。

「怖い?」
 耳元で優しく聞かれる。
 香澄は首を横に振った。
 怖いと言えば怖い。

 けれどそれは恐怖ではなくて、未知のものに対する怯えだ。
 耐えられないものでも逃げ出したくなるようなものでもなかった。

「怖くないかって言ったら、嘘になります。でも、もっとするなら私は神代さんがいいです」
 口から零れたその言葉が香澄の本当の気持ちだった。

 ふっと微笑んだ神代が膝の上にのったままの香澄を抱き上げる。
「え? 佳祐さんっ?」
「もっと、しましょう」

「重いから降ろしてください! それになんだか恥ずかしい」
「本当に可愛いですね。もっと恥ずかしがらせたいと言ったら怒りますか?」

 それは怒りたいかもしれない。
 けど、ご機嫌そうな神代を見ていたら香澄は怒ることもできなくなってしまった。

 そしてひとつだけ確認したいことがあったことを思い出す。

 ──私のことを好きですか?

 神代に横抱きにされて寝室に運ばれて、ベッドの上にそっと降ろされた香澄は、神代が抱きしめようとしたその胸元をぎゅっと押した。

「んん? やっぱり怖いですか?」
 ここまで香澄のことを気にしてくれているのに、まだ気づいていないのだろうか?
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