敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「佳祐さん、聞きたいことがあります」
「聞きたいこと? なんでも答えますよ」
 ふわりとした髪を神代は軽くかき上げる。
 そんな仕草さえ零れるように色気のある人だ。

「私……佳祐さんのこと、好きって言いましたよね?」
「はい。とても可愛かったです」

 私のことはどう思っていますか? たったこれだけのことが聞けずに香澄は口ごもってしまう。

 可愛いとかそういうことは本当にたくさん言ってくれているし、愛おしいと思ってくれるその気持ちもあふれんばかりに伝わってくる。
 けど、やはり大事なことだし聞きたかった。

「大好きですよ、香澄さん。可愛くて愛おしくて、食べられるなら食べてしまいたいくらいだ」
 それは突然神代の口から発せられたもので、あまりにも自然で香澄は驚いてしまった。

 だって、まるで空は青くて雲は白いですよねと言うのと同じ口調だったのだ。

「あ……あの、それ本当に……?」
「え? 俺、疑われてます?」
 きゅっと口角を上げて香澄の顔を覗き込むようすは決して疑われていると思ってはいないキュートな表情だ。

(どうしよう……大好きっ)
「ち、違……」
 嬉しかった。
 しかもこんなに胸が熱くなるくらいに嬉しくなるなんて想像もしていなかった。

 気づいたら、香澄の目から涙がぽろぽろとこぼれてしまっていた。
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