敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「こちらでしたら、開けばいつでもみられますし、なくす心配もありません。ポケットがいくつかありますから、今後送られてきたものを入れておくこともできます」

 確かに高村に言われたとおりクリアフォルダーに入れておけば、いつでも見られるし、綺麗に保管できるのもよかった。

 高村のこういうところが秘書として素晴らしい。
 いつも神代のことを最優先に考えて、そのベストな環境を整えてくれる。
 本当に優秀な秘書だ。

「よし、現物は写真に撮っておいていつでも見られるようにしておけばいいか」
 たかが手紙にここまでされていると香澄は思っていないだろうと高村は推測する。

(重いんじゃ……?)
 けど、神代が香澄を溺愛していることは本当によく分かった高村なのだった。

『神代佳祐様 先日お話していた書道展の招待状をお送りいたします。もちろんご一緒にお伺いさせていただけたらと思うのですが、念のために招待状をお送りいたします。当日、お会いできるのを楽しみにしております』

 文章としては短い文章だが、香澄が文字を書いている姿を神代は一度目にしているので、あのように真剣に書いてくれていたものを粗雑に扱うことなどできなかった。

 香澄のことを知れば知るほど惹かれていく自分を神代は理解している。
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