敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 香澄は同じ会派の流れの中で三つほどの資格を取得していた。
 そのため最低でも三つの書道展に出品することができる。
 その度、毎回出品料というものもかかってくるのだ。

 無料で出品できるわけでもなく、芸術にお金がかかるというのは物理的な筆や紙などだけではなくこういったものにもお金がかかるのはどこも同じだ。

 香澄自身、書である程度稼ぎもあるので出品料を払っても出品できるものはするようにしていた。
 その中で今日招待してくれたのは、別の会派ながら年齢が近くて仲の良い書道家のうちの一人だった。

 大きな書道展でもあるので、神代と行っても見応えはあるだろうと神代にも声をかけたものだ。

 神代は忙しいと思うのに、最近、調整できるところはするようにしたいと言っていた通りで、声をかけたら割とすぐ『行きます』と返事があった。

 ただし、その後は仕事が入っているため、食事にはいけないけれどもとしょぼんとしたスタンプをメールアプリで送ってくれる。
 忌憚のないやり取りは微笑ましく、香澄の心の癒しとなっていた。

 書道展の当日。この日、香澄は訪問着という着物で行くことにする。

 訪問着とは未婚、既婚問わずに着ることができるフォーマルな際に着用する着物だ。
 お祝い事だけでなく食事やこのようなお呼ばれの際に着ることができる。
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