敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 香澄が話すのを神代はとても楽しそうに聞いてくれて、いつもこの時間は香澄にくすぐったいような幸せを与えてくれるのだ。
 
 会場に入ると入り口に記帳台が置いてあり、そこで香澄は記帳を済ませる。
 書いた後で、神代に声をかけた。

「他一名という形で記帳しましたが、大丈夫でしたか?」
「構いません」

 会場に足を踏み入れると壁にはいろんな書が掲げられている。

 巻物のようになっているものもあれば、畳のように大きな紙に書いてあるものも、真四角の色のついた紙に書いてある書もある。

 入口近くは入選作品が置いてあることが多いので、香澄はそこで足を止めてしまっていたのだが、やはり神代は大きな書が気になるようだ。ダイナミックなものに興味を引かれているらしい。

「すごく大きな紙があるのかと思ったら、繋いであるんですね」
 ものすごい発見のように言うのがなんだか可愛らしい。普段の神代は香澄をリードしてくれることが多いのでこんな姿を見ることはあまりないのだ。

「ええ。あまりにも大きな紙なんてないので繋ぐんです。書道パフォーマンスの時も一緒ですよ。だから紙を敷く時は穴を開けないように本当に慎重に敷くんです」
 大きな作品を手掛ける時は紙がないので糊で貼って繋ぐのだが、それも非常に技術のいることだ。
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