敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
いろんな疑問もあったけれど、神代が『なにもなかったか』とか、『気を付けてください』と発言をしたことは事実なのだし、それについて香澄は納得していない。
──やっぱり……私に結婚なんて向いていなかったのかも。
タクシーの窓から動く景色をぼんやり見ていたら(結婚に向いてない私には書道しかないのかもしれない)という考えが頭をよぎる。
自然と目元に浮かんでしまった涙を香澄はとめることができなかった。
その翌日、香澄の姿は自宅敷地内の教室にあった。
先日まで書いていた付箋やメモを見ながら、大体作品にしたい言葉は決まっていたので、それを詰めるように言葉を探してゆく。
展覧会に出品する作品を書く場合、そのままの文章ではなくてより自分らしさや文字のバランスなども考えて書かなくてはいけないからだ。
──『輝きは心の中に在り形を変えても失われることはない』
そんな言葉を選択したはずなのに、今の香澄の心から輝きは失われていて神代がどれほど大きな存在だったのか思い知る。
香澄は目元が熱くなって、両手を顔を押さえた。
「う……うぅ」
嗚咽のようなものが漏れていると初めて気づいて、今度は堪えるのをやめた。
そうすると次々と目から涙がこぼれてくる。
(輝きが心から失われることがないなんて、嘘だわ……)
──やっぱり……私に結婚なんて向いていなかったのかも。
タクシーの窓から動く景色をぼんやり見ていたら(結婚に向いてない私には書道しかないのかもしれない)という考えが頭をよぎる。
自然と目元に浮かんでしまった涙を香澄はとめることができなかった。
その翌日、香澄の姿は自宅敷地内の教室にあった。
先日まで書いていた付箋やメモを見ながら、大体作品にしたい言葉は決まっていたので、それを詰めるように言葉を探してゆく。
展覧会に出品する作品を書く場合、そのままの文章ではなくてより自分らしさや文字のバランスなども考えて書かなくてはいけないからだ。
──『輝きは心の中に在り形を変えても失われることはない』
そんな言葉を選択したはずなのに、今の香澄の心から輝きは失われていて神代がどれほど大きな存在だったのか思い知る。
香澄は目元が熱くなって、両手を顔を押さえた。
「う……うぅ」
嗚咽のようなものが漏れていると初めて気づいて、今度は堪えるのをやめた。
そうすると次々と目から涙がこぼれてくる。
(輝きが心から失われることがないなんて、嘘だわ……)