敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「カリキュラムの関係で難しいんでしょうね」
「ああ、そうかカリキュラム……お詳しいですね!」
 人懐こい笑みを浮かべ、神代は香澄の顔を覗き込む。その表情がとてもキュートだ。

 香澄は胸がきゅうっと引き絞られるように切ない。かろうじて説明のために口を開くことができた。
「学校でも教えているんです。と言っても教員ではなくて、書道部がある学校からたまに校外指導員として呼ばれることがあるので」

「書道部! そうかそういうのがある学校もありますね」
「書道科のある大学もありますよ。私は国文科の卒業ですけど」

「それでもプロの書道家として活躍なさっているわけですね。すごいな。尊敬します」
「そんな……」
 面と向かって尊敬するなどと言われることは経験がないし、真っすぐ香澄に向かって自分の気持ちを伝えることのできる神代を香澄は眩しいような気持ちで見つめてしまった。

柚木(ゆうき)先生……ですね」
「お教室でもそう呼ばれますよ?」
 神代の口から『柚木先生』などと呼ばれて香澄は今度はどきんとしてしまう。頬が赤くなっているのが自分でも分かった。

「ふふ、可愛いな。照れてますか?」
「なんでしょう……普段そう呼ばれているときは平気なんですけど。神代さんに呼ばれて照れてしまいました」
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