敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 香澄は練成会に出すための書と生徒さんの見本をいくつか作って、筆を置く。
 最後に書道で使用しているテーブルを片付けて、指輪をつけた。

 練成会は会派で行っている練習会だ。
 香澄の直接の師匠は清柊だが、練成会では清柊よりももっと偉い先生がきてくれて、書の指導をしてくれる。

 展覧会の審査員をされるような先生だ。
 練成会当日、香澄は自宅で改めて書いたものと練習用の白紙を準備し会場に向かう。

 会場には会派の皆さんが練成会のために書を広げたりして準備をしていた。
 作品の中には畳三畳以上ある大きなものもあるので、広げるだけでも大変だ。

 香澄も指示された場所に行き、半紙を広げていると清柊がやってきた。
「柚木さん、お疲れさまです。ああ、これは改めて書いたものですね」

 きっと他の人が見ても分からないだろうと思うのだが、さすがに清柊はすぐに気づいた。
「はい! 書き直したものを持ってきました」
「うん。この方が柚木さんらしいですね。それになにか今までにはない伸び伸びとしたものを感じる。前向きな気持ちになれそうでとてもいいです」

 前回、清柊に見てもらった時はいい評価ではなかったので、今日はこのように言ってもらえて香澄はとても嬉しかった。
「あとの細かいところはまた先生に見ていただきましょう」
「はい」
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