敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 瞳をキラキラとさせて泰山を見ている香澄を離れたところで見ていた清柊は(その表情を神代さんが見ていたらどんな顔をするんでしょうね?)と苦笑しながら見ていた。

 泰山はもうおじいちゃん先生だが、この道では高名な書家であり、日本の名だたる展覧会の審査員もしている人物だ。

 その書については泰山に書いてもらえば今、どれほどの価値があるか分からない。
 けれど香澄にとってはきっと価値なんかではないのだろうと喜んでいる表情を見て清柊は微笑ましかった。

 指輪をもらって一か月経ち、最近は時間のある時は神代の家に立ち寄ることの多い香澄は、ダイニングテーブルの向かいにいる神代に話しかけていた。

「清柊先生に言われて、初めて気づいたんですよね。泰山先生に書をいただくってことの価値に」
 今日の香澄は錬成会のあと自宅に一旦戻って母と一緒に食事を作り、それをダイニングテーブルに並べていた。

 豚肉の生姜焼きとか茄子の煮びたしとか胡麻和えとか、普通の家庭料理なのだが外食が多い神代からするとそういうものがとても美味しく感じるらしいのだ。

「価値……ですか?」
 いんげんの胡麻和えを箸でつかんで神代が驚いたような声を出している。
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