敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
16.餞(はなむけ)
 金額の問題ではないのだと香澄は言いたかったのだが、神代は首を傾げている。

「表装……ですか?」
 多分『表装』に神代はピンときていないのだ。
 そんな時、香澄は説明するようにしている。

 神代はいつも興味深そうに聞いてくれるので説明していても楽しい。
 それにふと、後日思い出したように質問をしてくれたりもする。

 お互いに知らないことが多いので最近はたくさん話すことにしているのだ。
 香澄も神代の仕事について分からないながらも、質問をして教えてもらうようにしていた。

 神代の仕事のことは本当に難しいけれど、神代は分かりやすくかみ砕いて説明してくれる。
 そうしてすれ違いをなくすのが二人のやり方になっていたのだ。

 香澄は表装について説明することにした。
「表装とは書を紙や布で裏打ちして補強し、それにふさわしい装飾を行うことです。展覧会に出す時も表装してから出品します。昨日書いて、明日出品というわけにもいかないんですよね。表装がありますから」

「確かに。この前展覧会にお邪魔したときも綺麗に額に入っていたりしていたな」
 こくこくと香澄は頷いた。
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