敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「表装をすることで紙も真っすぐ綺麗になってそれらしい感じになりますね。半紙に書いてそのままにしておくと、墨が乾いて紙がシワになるんです。そういうのを防ぐ効果もあります」

 神代は顎に手を当てて心当たりに頷いていた。
「学校の宿題は言われてみればシワが寄っていたな」

 こくこくと香澄も頷いて同意する。
「表装をしないとそうなりますね。(がく)だけではなくて、掛け軸や屏風にしたりします」

「巻物もあったな」
 先日の展覧会のことだろう。巻物状に表装することもあるのだ。

「それも表装ですね。あれは巻物のような長い紙があるというより、短い紙を繋いで表装しています。表装も人の手でやりますから、とても技術のいることなんですよ」
「なるほど……」
 
 そんな話をしながら食事を終え、ダイニングを片付けた二人はリビングのソファへ移動する。
 香澄の居場所はいつの間にか、神代の膝の間になっていた。

 今日は今週末、行くことになっている神代の家の話になる。
「神代さんのおうち、とっても緊張します」

「普通の家だからそんな風に緊張しなくていいですよ」
「あの、お菓子は扇堂で大丈夫ですか?」
「いちごケーキですね? 母が好きなんです。とても喜ぶでしょうね」
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