敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「招待状は書きますね」
「大変じゃないですか?」
 神代がパソコンの手を止めた。

 今、神代がやってくれている作業だって大変なことだと思うのに神代は自分の得意分野だからとやってくれている。
  それで言うならば、招待状を書くのだって香澄の得意分野なのだ。

 お互いに得意なところを活かしてお互いにカッコいいなあと思えることが幸せだと香澄は感じていた。

「全然? お教室の隙間時間に少しずつ進めていくようにします」
「お願いいたします」
 神代が頭を下げ、香澄は「承知しました」とにっこり微笑む。

 結婚式の準備中、喧嘩をするカップルもあると香澄はいろんな人から聞いていたけれど、そんなことはない。

 香澄に困ったことがあると神代はどんどん相談にのってくれるし、判断してほしいことはテキパキと判断してしまうからだ。
 とても頼りになる婚約者だった。

 家族の顔合わせを終え、香澄は正式に神代の家に引っ越すため、少し前から準備をしていた。
 幸い実家の香澄の部屋もそのまま残してくれると言うし、書道の教室も実家の敷地内でそのまま続けることにしたので、荷物は本当に生活に必要な分だけだ。

 それでも衣類などを畳んでいるとこの家を出るんだなぁと実感が湧いてくる。
< 182 / 196 >

この作品をシェア

pagetop