敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 そう返事をして神代はまた書に顔を向けた。そして香澄の手をそっと握る。
「いつまでも、俺の隣で輝いてくれたら。そう思います」

 神代の隣で。香澄もそうでありたかった。
 握ってくれた手をきゅっと握り返す。
「はい」
 返事をして香澄は神代に寄りそった。

 きっといつまでもお互いに輝いて見えるような関係が続いていくのだろう。
 そうでありたいと香澄は心から願った。

「相変わらず仲良しですね」
 二人の後ろからそう声をかけてきたのは清柊だ。少しあきれたような表情だった。

「清柊先生!」
「お世話になっております」
 香澄と神代は二人で頭を下げる。

「お疲れ様です。先日は結婚式へのご招待ありがとうございました。とても素敵な式でしたね。ハネムーンはこの東部書道展の後にするとお伺いしましたが」

「はい。まずは展覧会が優先ですので」
 返事をした香澄に清柊はにっこり笑った。

「おめでとうございます。柚木さん、佳作賞の受賞が決定しましたよ。作品は国立美術館での展示も予定されています」
「え! 本当ですか! 嬉しいです!」

 東部書道展で受賞の知らせを清柊から聞き、笑顔になった香澄へ神代もお祝いの言葉を向ける。
「すごい! おめでとうございます! 今日はお祝いしなくてはいけませんね」
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