敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「たとえば、子どもたちのための小さな書道展などを実施するのはいかがです? 優秀な作品は弊社の本社ロビーで作品を掲載することもできますよ?」

「佳祐さん、すごく素敵です!」
「審査委員長は翠澄先生ですね」
 神代の提案に清柊もにこにこして付け加えた。

「柚木書道会主催で『柚木書道展』とでもしますか?」
 話がだんだん大きくなっていくので香澄は焦ってしまう。

「一般的には後援の企業の名前を冠することが多いんですよ。新聞社が後援ならその新聞社の名前になりますし」
「では神代書道展?」

 香澄は両手を口の前に持ってきて、提案した。
「神代こども書道展、はいかがですか?」
「ああ、とてもいいな」
 子供には表彰されることはとてもいい機会になり、それが頑張れる原動力にもなる。

 またそれをきっかけに書道が広がるのだとしたら、香澄にとってもそれほど嬉しいことはない。
 それを自分の愛する夫とできるのだと思うとこれ以上はない幸せだった。
 
「翠澄先生! 佳作賞ですって? おめでとうございます!」
 香澄にそう声をかけてきたのは岡野だ。

 声のした岡野の方を香澄も振り返った。
 華やかな山吹色の着物が可愛らしい姿の岡野がにこやかに立っている。
「芳睡先生! ありがとうございます」
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