敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「今日はご主人も、清柊先生もご一緒でなんのお話ですか?」
 そこで香澄は先ほどのこども書道展の話をした。

「芳睡先生も参画していただけませんか?」
「えー! いいんですか? それはもちろんですけど、清柊先生、構いませんか?」

「後援が神代ホールディングスですから、若い書道家の先生方が会派を超えてされることを邪魔はしません。応援させていただきますよ」
 
 やったやったと香澄と岡野が両手を合わせて喜ぶ。嬉しそうな香澄の笑顔に神代は提案してよかったと心から思った。

「さらりとすごいことをご提案されましたね」
 清柊は少しあきれたような感心したような表情をしている。神代はにっと笑顔を返した。
「愛する妻のためですから」

「全くあなたにはあきれますが、それ以上にその実現力は誰にも真似できないでしょう。柚木さんは素晴らしい方とご結婚された。本当に心からおめでとうございます」

 それはこれ以上もないほどの誉め言葉だった。神代も頭を下げる。
「ありがとうございます。本名はもう柚木ではないですけど」

「承知していますよ。意外と嫉妬深いな、神代さんは」
「ええ。そうみたいです」
 その嫉妬深さは香澄に対してだけ発揮されるのだということも最近知ったことだ。
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