敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 出会って最初からお互いにいい印象だと思ったのに「ごめんなさい」と言われて、逃げられてしまった。こんな人とは二度と出会えないと諦めきれず追いかけて、やっと手に入れた人だ。

 手に入れたかと思うと何度もその手をすり抜けそうになり、最近になってやっと真っすぐ神代のことを愛してくれていると実感し、二度と手離さないと決めた人なのだ。

 はしゃぐ香澄を目にして、神代はこれ以上もないほどに綺麗に微笑んだ。
「彼女のためならなんでもしますよ」
「あなたは有言実行の方ですからね」
 清柊は苦笑を返した。その実行力は身に染みて知っている。


 ふわりとカーテンがひるがえって、神代の顔に朝日を落とす。
 目が覚めた神代は傍らにいる香澄に目をやった。すやすやと安心したように眠っている姿がこの上もなく愛おしい。

 自然と唇が香澄の頬に触れていた。
「ん……ふふっ……」
 どんな夢を見ているものか、香澄の口元が微笑む。その可愛らしい表情越しに、昨日の夜、神代が散々残した痕が花びらのように散っていた。

 真っ白な柔らかい胸元に赤く散る痕は独占欲をいたく満足させる。
『あっ……あ、佳祐さぁ……んっ』
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