敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「痕……?」
「キスマークですよ」
 そう耳元で囁かれて、香澄は真っ赤になってしまった。

「ほ、本気ですか?」
「もちろん」
 にっこりと天使のごとく笑みを浮かべる神代が心から本気だと香澄にも分かる。

 ごくっと香澄は息をのんで、そっと神代の白いつるりとした肌に唇をつけた。
 ちゅっとしてみたもののそんなものでは痕もつかない。

「おかしいです。つきません」
「もっといっぱい吸って」
「え……」

 確かに言われてみれば、香澄の肌に痕をつけるときは神代も強く吸っているかもしれなかった。けれど、そんなに吸うとは思わなかったのだ。

 もう一度肌に唇をつけた香澄は頑張ってちゅうっと一生懸命吸う。
「ん……」

 その声にちらっと上目遣いで見ると、神代が顔を赤くしていたのだ。
「ごめんなさい。可愛すぎて、興奮して少し声が漏れてしまった」

 ということはさっきの声は神代が感じてくれた声なのだ。
 普段声を出していいと言われているけれど、感じている声を聞けることがこんなにも嬉しいものだと香澄は知らなかった。

「もっと、聞きたいです」
 そう言った香澄が肌から唇と離すと、綺麗に花びらのような痕がついていた。

 それを見て香澄ははしゃいだ声がでてしまう。
「見て! 佳祐さん、綺麗にできました!」
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