敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
3.ガラスの靴を置いて
「柚木《ゆうき》香澄《かすみ》です」
「香澄さん、見つけた。本当に君だ」
 そういって見せた神代の笑顔は元からの顔立ちの端正さとも相まって、輝くようなもので香澄には眩しいくらいだった。

「あの……本当に探したのですか?」
 疑問に思って香澄は聞いてみた。
「ええ。そうです。君がシンデレラのようにガラスの靴を置いていってくれていたから助かった」
「ガラスの靴?」
 そんなものを置いていった覚えはない。

「ヒントですよ。柚木家には菜々美さんと年の近い従姉妹がいた。書を(たしな)んでいる年の近い従姉妹はあなただけだ。それでも探すのは簡単でなくて二週間もかかってしまった。書は本名ではないんですね」

「あ、そうです。雅号っていう書道用の名前を使いますから」
 もちろん香澄にも雅号があった。神代は眉根を寄せて苦笑している。

「知らなかったんです。けど、俺はあなたを探し当てた」
 あの綺麗な榛《はしばみ》色の瞳が真っすぐに香澄をとらえていた。

「俺と結婚を前提にお付き合いしてくれますか?」
「結婚前提!? どうしてそうなるんです?」

「だってお見合いに来ていたでしょう。あれって結婚前提ですよね」
「けど、神代さんもご存じなんですよね? お見合いは菜々美ちゃんの身代わりで……」
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