敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「柚木家としてはどちらでも構わないみたいですよ?」
 それはそうかもしれないけれど。やけに用意周到なような……。

「伯父様、菜々美さんのお父様も、香澄さんのお父様にもご了解いただきました。香澄さんと結婚前提の交際をさせていただくこと。お二人とも大変にお喜びで」
 そう言って、神代はにっこりと笑う。

「ああ、そう言えば香澄さんを身代わりにしたこともお詫びされましたね」
 しれっと神代が言うのに、香澄は言葉を返すことができない。心の中で叫ぶだけだ。

 ──伯父様っ! お父様まで、裏切者っっ!
 逃げられない……いや、こんな風に追いかけられたら逃げる気なんて端からなかった。

「私、菜々美ちゃんの身代わりだからって……」
「はい。それが君のお断りしなくちゃいけない事情だったんですよね? じゃあ、今は? 俺はあの時もっと一緒にいたいと思った柚木香澄さんに交際を申し込んでいるんだけど?」

 綺麗な整った顔立ちで微笑んで首を傾げられたら、もう逆らうことなんでできなくて。
 しかもあの時は話していて楽しかったことも間違いではない。

 確かにあの時、自分が本来の相手だったらと願わずにはいられなくて、それで泣きそうになっていたことも間違いではないのだから。

「その、ふつつかですが……っ、よろしくお願いいたたします」
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