敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 連絡先を交換したものの、普段はメールアプリのテキストメッセージでのやり取りが中心となってしまっていた。
 たまに、夜時間ができると神代が『通話してもいいですか?』とメッセージをくれてそれに香澄が了承すると、通話するという感じだ。

 スマートフォンの向こうからは神代のため息が漏れ聞こえていた。
『はぁ……せっかくシンデレラを見つけたのに、一向にお会いできない……』

 物語ではお姫様を探し当てた王子様は幸せに暮らしました。というのがエンディングであり、その後の生活については描かれないのが一般的だ。

 まさか、香澄も交際している相手と会うことがこんなにも難しいことなのだとは思わなかったのだ。神代が言わんとすることは分かる。

「神代さんもお忙しいですものね」
『しかも俺のお姫様は聞き分けが良すぎて、会いたいとかわがままを言ってくれないし』

 どうしよう。会いたいのは間違いないのだが、なにせ交際歴のない香澄のことだ。
 どれくらい相手に甘えていいのか分からないというのが正直なところだった。

「え? えっ? わがままを言った方がいいんですか? 私も会いたいです……本当は」
 小さい声で正直な気持ちを打ち明けてみたら、さらに大きなため息と甘くて低い声が耳をくすぐった。
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