敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 一般的な手紙の書き方としては『拝啓』などの頭語で始まり、次に『時候のあいさつ』などを入れる。
 けれど親しい人に送る場合は、頭語・結語などを省いて簡略化したスタイルでも構わないと教室でも教えていた。

(交際相手は親しい人でいいのよね?)
 真っ白な下書き用の紙を前にして香澄はそんなことを考える。頭語は省くこととした。

 明日にでもポストに投函すればディナーまでには到着するだろうと考えて筆を執る。
『神代佳祐様 お忙しい日々をお過ごしのことと存じます。……』

 手紙の内容は今日、教室で友人に手紙を書く生徒さんがいたので自分も書いてみようと思ったこと、普段は会えないことも多いけれど香澄も会いたいと思っていること、それからディナーを楽しみにしていることなどを簡潔にまとめて文章にした。

 一度読んで、違和感を感じるところや文章の繋がりがおかしいところ、それから助詞などをチェックしていく。

 自身の手紙に赤を入れてからもう一度下書きをして、字のバランスを確認し本番用の紙に書き写していった。

 書いている間は集中できる。
 書き終わって遊び紙に余分な墨を吸わせて、もう一度確認した。

 特に問題はないと思ったので以前に神代にもらった名刺を取り出し、丁寧に宛先を書いて切手を貼る。
< 32 / 196 >

この作品をシェア

pagetop