敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 すらりとした長身とオーダーメイドと思われる身体にぴったりのスーツ姿だけでも目立つのに、榛色の髪と瞳を持ち端正な顔立ちは誰が見ても惹かれてしまうだろう。

 香澄はつい速足で駆け寄ってしまった。
 その足音で神代は香澄に気づいたようで、顔をあげると香澄の方に同じく速足で歩いてきてくれる。

「急がないで大丈夫です」
 時計を確認していたから遅れてしまったかと香澄は焦ってしまったのだ。

「お時間、大丈夫でした?」
「全然。俺が楽しみで早く着きすぎてしまったんです。少し早かったなって思っていたところでした」

 神代の嬉しそうな笑顔は本当に素敵だ。
 まだ伝えたことはないけれど、大好きな榛色の瞳が真っすぐに香澄を捉えている。

「とても素敵なお店ですね」
 香澄は建物の方を見上げた。
 レンガ造りの建物は雰囲気があって近くで見ても本当に素敵だった。

「そう言っていただけると嬉しいです。以前にお客様に連れてきていただいて、今度はぜひ大切な人と一緒に来たかったのですよ」

 香澄のほうこそいつも真っすぐな神代の言葉が嬉しかった。
「可愛らしい服ですね。とても綺麗です」
 眩しそうな表情で神代が香澄を見ていた。
「ありがとうございます。神代さんもいつも素敵です」
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