敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 神代ににこりと微笑まれて、香澄は顔が赤くなってしまう。
「突然のことですみませんでした。ご迷惑ではありませんでしたか?」
「いいえ。実は秘書も目を通してしまったんです。すみません」

 そこで香澄はハッとする。確かに思わず会社に出してしまったけれど、神代ほどの立場の人ならば秘書がいて当然だし、秘書が目を通しても仕方ない。

 改めて変なことは書いていなかったわよね、と自分が書いた文章を香澄は心の中で振り返る。
(多分、大丈夫だわ)

 おそらく自宅に戻れば下書きを確認することもできると思うのだ。
「こちらこそ、すみません。会社にお送りするものではなかったですよね」
 しゅんとすると神代はあわてて否定する。

「とんでもない! 今後そういうことはしないと秘書も言っていましたし、とても嬉しかったんです。毎日送ってくれてもいいくらいだ」
「毎日? そ、それは無理です!」

 ふふっと神代から聞こえた笑い声にそれは冗談なのだと香澄は察する。
 香澄が気まずい思いをしないようにと言ってくれたのだろう。本当に素敵な人だ。

「香澄さんが会いたいと思ってくださっていることが伝わって、とても嬉しかった」
「え!?」
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