敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「あとは書道家のお仕事として大きなものが展覧会なんです」
「展覧会? そういえば最初にお会いした時も展覧会に出展するとおっしゃっていましたね」

「そういうときはお着物で行ったりもしますね」
「着物もいいな……」
 ものすごく小さな声が聞こえたかもしれない。

 いや、もしかしたら香澄の気のせいだろうか?
 神代が真っすぐに香澄を見た。
「言われてみればいわゆる日展のような、大きな展覧会でも書道の部があったような気がします」

「そうです! そういう展覧会に出して入賞することも大事なんです。展覧会に出さないとなかなか他のお仕事をいただくことも難しいです」

「他のお仕事ですか?」
 他の仕事と聞いて、さらに仕事があるのということが意外なのか神代は驚いた様子を見せた。

 香澄は頷く。
「ええ。以前に少しお聞きいただいた学校への派遣などは個人的なご依頼というよりも会派への依頼だったりします。展覧会に定期的に出すような先生でないとお教えすることも難しいですね」

「会派……ですか」
「展覧会によっては会派で分けられていることもありますから」
 そこまで聞いて神代は大きくため息をついた。

「思っていたよりもいろいろとある世界なんですね。そういうしきたりの中でお仕事をしている香澄さんを尊敬します」
「慣れてしまえば……なんですけどね」
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