敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「本当です。子どもの頃に怖い目にあって。けれど不思議ですね。こんなに近くにいるのに、神代さんは怖くないです」
「子どもの頃?」

 神代が首を傾げるので、香澄は子どもの頃にあったことを語った。一瞬怒りのような神代の気配を感じる。
「不埒な奴ですね。捕まって、香澄さんにも何事もなくてよかった」

 香澄のために多分神代は一瞬怒ったのだろう。なぜかそれが分かって、香澄はなだめるように神代の背を撫でた。神代が優しく強く香澄を抱きしめる。
「頑張りましたね」

 この人が大好きだ。神代はいつも香澄を見ていてくれて褒めてくれる。抱きしめてくれた身体のその背中に香澄はぎゅうっと腕を強く回した。

「可愛いな。香澄さん」
「神代さん、好きです」
「参ったな。これでも懸命に我慢をしているので、誘惑しないでくださいね」

 困ったような顔で見られて、香澄は首を傾げた。そんな香澄の唇にまた神代の唇が重なる。
 今度は先ほどのように軽く触れるだけではなかった。

 再び唇が重なって香澄は目を閉じる。神代の舌が柔らかく香澄の唇をなぞった。
 優しく開けて? と言われているようで、少し戸惑いながらも香澄は唇の力を緩める。

 するりと香澄の口の中に入ってきた舌が優しく香澄のものと絡まった。逃げても口腔の中で追われて甘く絡め取られる。

「ん……っ」
 自然と漏れてしまった甘い声すらキスに吸い取られるようだった。
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