敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
6. ポジティブとネガティブの間に
 どうやって家まで帰りついたか香澄はよく覚えていなかった。
 神代が自宅まで車で送ってくれて、帰り際にくすりと笑って唇に軽くキスをしてくれたのはなんとなく覚えている。

「今日はこれくらいにしておきますね。でないと香澄さんのことをもっと欲しくなってしまうから」
 そう甘く耳元で囁かれた。

 顔が熱くなる中、車の助手席を開けてくれて一緒に玄関まで行ってくれて母に挨拶をしてくれたことも「もう神代さん、本当に素敵な方ねぇ! 香澄ちゃん、よかったわね!」と大喜びされてしまったこともまるで夢の中の出来事のようだった。

 自分の部屋に帰ってきてベッドに座り、今日のことをゆっくりと思い返して実感してしまった。
 ──キス、してしまった……!

 神代はすごく優しかった。今まで交際相手などいなかったのだから、香澄にしてみたら初めてのキスである。

 もちろん口の中をまさぐられるようなキスなど初めてだったけれど、とても優しく抱き締めてくれて香澄が怖がらないよう、けれど強引にされたキスは思い返すと胸がきゅんとする。

 香澄はがばっとベッドに顔を伏せる。
(神代さん、すっごくいい匂いだった)
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