敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 本当にそう心から思っているのに、そんな風に流されてはかなわない。
 返ってきたのは「書道が好きなんです」という言葉だった。

 正直、そこで初めてあの写真の彼女だろうかという気持ちが刺のように心に引っかかったことも間違いはない。

 その後書道についていろいろ教えてくれた。
 正直今まではあまり関わりのないことで書くことなど興味もなかったが、香澄が瞳を輝かせながら話をするから、とても興味をひかれたのだ。

 詳しく聞くと教室で教えているというので「柚木先生」と呼んだらふわりと頬を染める。
 そのピンクに染まった頬に思わず触れてしまっても、仕方のないことなのではないだろうか。

 指先が触れただけなのに驚いたように身体を揺らす風情までもが神代の好みだった。
 思うさま抱きしめたい。そんな風に思うことはついぞなく、そんな自分に驚いたくらいだ。

 この頃には香澄とお見合いを進めることを決めていた。
 けれど一緒に過ごしていて、香澄からは好意らしきものを感じるのに、時折悲しそうな切ない表情を見せる。それもとても気になっていた。

「ごめんなさい」
 そう言われた時は一瞬絶望しかけたが、香澄の顔があまりにも悲しそうなので事情があるのだと察した。
 ──このまま逃がすか!

 めったに出逢わない好みドンピシャの女性なのだ。
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