敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「俺のこと、イヤですか? 嫌い?」
 そう聞いたのは賭けのようなものだ。

(絶対に嫌いではないはずだ……!)
 それは祈りにも似たような気持ちだった。
 嫌いですかと聞いた神代に対してふるふるっと香澄は首を横に振ったのだ。

 嫌いじゃない。
 今はそれだけが分かればよかった。
 絶対に捕まえる。
 それを自分が決めてさえいれば必ず実現する。

 香澄の手を握ったのはそれを自分に誓うためだ。
「事情があるなら今は逃げてもいいです。けど、俺は必ず追いかけてあなたのことを捕まえますよ」
 そう言って、香澄の指先に口付けをしたのは香澄への誓いだった。

 もともと神代はリサーチも得意分野だ。
 その特技を活かして柚木家を調べてみた。柚木菜々美のことを探してみる。
 リサーチに引っかかってきたのは、あの日会った彼女とは別人だった。

「違うな……」
 SNSが判明したので確認してみたが、柚木菜々美は非常に活動的な人物のようで、その中には書道のしの字もなかったのだ。

 友人とキャンプに行ったり、外でスポーツなどする姿はあの時会った菜々美の姿とは全く一致しない。
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