敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「そう思ってもらって構わない。一度は顔を合わせたんだ。実在しないわけでもない。本当は直接彼女の家族に依頼してもいいんだが、最初からだますつもりがあったのか。現状では判断できないんだ。だからこちらから頭を下げるようなことはしたくない」

 神代がそう説明すると友人は納得したようだった。
「分かった。調査結果を悪いことで使うわけではないようだから、個人的に引き受ける」

「礼はする」
 そう言うと友人はにやりと笑った。

「金はいらない。個人的に受けるものだ。けど調査の結果によって神代が彼女と上手くいったときは、ぜひその彼女に会わせてくれ」

 結果がどうなるか、その時点では分からなかったので承知したのだが、今にして思えばそんな約束をしても良かったのだろうかと少し悔やむ部分もなくはない。

 それでも友人はさすがのリサーチ力で一週間ほどで彼女の正体を調べ上げた。

「名前は柚木香澄。香るに澄んだ水などの澄だ。年齢は当初に聞いていた年齢と違うな。二十六歳だ。書道家なのも間違いない。雅号は『翠澄(すいとう)』翠に澄と書く。主に自宅で書道教室などをしているようだが、他にも書によるデザインなんかもしていて、店の看板や会社の名前なんかのデザインも提供しているみたいだ。確かに美人だな。柔らかい雰囲気、というか」
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