敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「か……香澄……」
 父親はガックリしていた。
「そのことも分かっているんですね」

 神代が経緯を予想するにはこうだ。
 本来の神代の見合い相手は『柚木菜々美』だった。

 しかし何らかの事情があり、見合いに穴を開けるわけにはいかない伯父に頼まれた『柚木香澄』が身代わりとなって見合いをした。

 伯父は真剣だったろうが、受ける方はお互いに断る前提の見合いだ。
 誤算があったとすれば、神代が本気になったということと、多分……だが香澄も悪くは思っていないということだ。

「俺は香澄さんと正式にお見合いを進めたい。なにか問題はありますか?」
「香澄の意向だけ確認してください」
 その父親の言葉に神代は頷いた。

「それはもちろんです。香澄さんの意向に反してまで自分の意見を押し付けるつもりはありません。もしも、香澄さんも構わないと言ってくれたら……いいですか?」

 こくりと父親が頷くのを神代は確認した。
「その際は神代さんにお任せいたします」
 そうして柚木家に香澄と会うことをセッティングしてもらったのだ。
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