敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 目に綺麗な封筒が飛び込んでくる。

「なぜ、あんなに可愛いんでしょうね?」
 素直で一生懸命で、真っすぐで純粋。初めてのキスなのだと言っていた。柔らかく甘い唇。もっとどうぞと言われたらいくらでも味わっていられそうだった。

 こらえきれなくて、ふわりともたれかかってくる様すら愛おしかった。
 神代は手紙に軽くキスをする。そういえばこの香りは香澄からも香ったかもしれない。
 手紙をそっとテーブルに戻した神代はバスルームにシャワーを浴びに向かった。

  * * *

 とても幸せな一日だった……はずだ。
 なのに最後にあんな不思議な疑問が湧いてしまったがために、香澄の思考はポジティブとネガティブを行ったり来たりしていた。

 素直に聞けばいいのかもしれないが『私のことを好き?』と聞く自分を想像して香澄は両手で顔を覆うことしかできない。

 ──無理っ!
 ハードルが高すぎる。

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