敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
『私、結婚させられると思って家を出たの。なんか父がお見合いをセッティングしていたでしょう。私がいなくなれば諦めると思った。そうしたら、香澄ちゃんを身代わりにしたんだね!』

 電話の向こうで菜々美はプリプリ怒っている。菜々美はこういう人だった。
 他からは破天荒に見えても菜々美にはいつもきちんと説明できるだけの理由がある。

 多少それに自己中心的ところがあったとしても理由もなく家出までするような人ではないのだ。
 香澄はため息をついた。

理由があることはいつも分かっているけれど、菜々美の突飛な行動は周りに迷惑をかけることも多い。

「お見合いはお断りすればよかったでしょう? 家出まですることはなかったんじゃないの?」
 香澄がそう言うと、しゅんとした声が受話器の向こうから聞こえる。

『断っても父は次の話を持ってくるつもりにしていたんだもん。絶対に私を結婚させたかったみたい。結婚でもすればおとなしくなるだろうって。そうはいくかっていうの』

「菜々美ちゃん……」
 それでも菜々美が香澄に迷惑をかけたことは間違いない。
『香澄ちゃん……ごめんなさい。断った? 断っていいよ!』

 そう言われて話が変わってしまったことを菜々美が知らないことに香澄は気づく。
「あ……のね、結局お見合いは進んでいて……」
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