敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 初めて食べるショートブレッドは確かに神代が言う通り、ほろほろと口の中で崩れる食感がなんとも言えない。
 紅茶も少し濃い目なのが神代式なのか濃いこともあり、まるでコーヒーのような味わい深さがあった。

「香澄さん……」
 美味しくいただいていると名前を呼ばれて香澄は顔を上げる。
「今日みたいなことはやめてください」
「はい……」

 きっと本当に心配をかけてしまったのが申し訳ない。香澄はしゅんとしてしまった。

「ご自宅にいるかと思ったのにいなくて驚いて、しかもどこにいるか分からなくて心配で仕方なかったんです」
 切なげな瞳でそう言われて、香澄はハッとした。

 自分は菜々美のことや、新しいことをするのにいっぱいいっぱいになってしまって、そんな風に心配をかけてしまうことに思いは至っていなかった。

「ごめんなさい」
「赦さないです」
 いつも香澄に甘い神代に赦さないなんて強い言葉で言わせてしまったことを悔やむと同時に涙が込み上げてきた。

(どうしよう……赦してくれないなんて……)
「本当に、心配かけてごめんなさい」
「悪いって思ってますね?」
 こくこくっと一生懸命香澄が頷くと神代からは深いため息の音が聞こえてきた。

 そしてソファの上でふわりと抱き寄せられて、神代の膝の上に乗せられた。
 端正な顔がものすごく近い。
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