復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「なぜ無理なんだ?君が妹を大切にしているのはよくわかる。だから彼女も連れておいで」
 「だっ、だから何度誘ってもらっても、無理なものは無理なんです!」

 私は電話をプツリと切ると、スマホを胸に抱きながらその場に立ち尽くした。項垂れると何もない地面をじっと見つめる。

 最近彼と結愛の間でグラグラと揺れ動いている自分がいる。彼が私を誘う度に、触れる度に、私の中で彼の存在がどんどん大きくなってくる。

 結愛よりも大きくなりそうな彼の存在に、こうして何度も何度も自分にブレーキをかけなければならない。でもそれも最近、難しくなってきている。

 (だって、そんなこと言ったって、私が側にいなかったら結愛はどうなるの?一人ぼっちになっちゃうじゃない……)

 私が彼と一緒に時間を過ごせば過ごすほど、結愛との時間は必然的になくなってしまう。置いていかれる寂しさがわかるだけに、結愛よりも彼を優先することはどうしてもできない。

 最近この二つの思いに心が引き裂かれてしまう。どうしたらいいのかわからなくて、私は項垂れたまま再びトボトボと家に向かって歩き出した。


**


 「結愛ー、ご飯出来たよー」

 料理の火を止めた私は、二階の部屋で寝ている結愛に声をかけた。キッチンには優しい雑炊の匂いが漂っている。

 これくらいだったら食べれるかなと思い、ほうれん草などの緑の野菜と溶き卵を入れた雑炊を作ってみた。それとスイカに結愛の欲しがっていたゼリーもテーブルに並べてある。

 「お姉ちゃん、ごめんね。ご飯作ってくれてありがとう」

 階段から降りてきた結愛は、ここ数日あまり食事ができないのかすこしげっそりとしている。

 「すこし食べれそう?」
 「うん、頑張ってみる」

 そう言って彼女は食卓につくものの、雑炊の匂いを嗅いだ途端「うっ」と小さく声をあげてトイレへと駆け込んだ。
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