復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「あの、ご趣味はなんですか?」

 うふふと再び輝くような笑顔を向けると、今度は可愛く首をコテッと傾げた。一応媚薬が効くまで彼と何を話すかトピックもちゃんと考えてきてある。

 「ご趣味……?」

 彼は首を傾げて私の言葉を繰り返すものの、なんだか瞳は何もない宙を彷徨っている。もしかするとすでに媚薬の効果が現れ始めているのかもしれない。

 「……趣味というか泳ぐのが好きかな」

 彼はしばし視線を彷徨わせた後、ポツリと答えた。

 「泳ぐ……?」

 なんだか思ってもいなかった答えに、思わず眉根を寄せながら聞き返した。

 「ああ、小さい頃から泳ぐのが好きでずっとクラブに所属してた。今でも休みの日にはよく泳ぎに行ってる。学生の頃は1500m自由形を泳いでた。と言っても高校2年までだけどな」

 「1500m!?」

 1500mということは1.5キロという事だ。そんな長距離ジョギングでも大変なのに、それを泳ぐなんて考えただけでも息苦しくなってくる。そもそも私なんて25m泳げるかもわからない。

 「すごい!そんな長距離を泳ぐなんて!途中で苦しくて諦めそうになったりしないんですか?」

 彼の思いがけない趣味というか特技に、驚きと尊敬の眼差しで見つめた。

 「一応そうならないよう体力をつけたり、自分の限界を考えながら泳ぐんだが──…」

 彼はそう言うと、目を輝かせている私を少し面白そうに見ながら低く笑った。

 「後半疲れるからって前半余力を残し過ぎてもあまり良くないんだ。後半で追いつけなくなってしまうからな。長距離はちょっとでも気を緩めたり諦めたりしたらそこで終わりだ。100mで1秒でも遅れたら1500mで15秒も遅れてしまうことになるからな」

 「そうなんですね……」

 そう淡々と話す彼を私は少し意外な目で見てしまう。
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