復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「逢莉」

 再び逃げ出そうとした私を呆気なく捕獲すると壁に押し付けた。

 「口を開けてごらん。一体どんな効果があるか、試してみようか」

 そう言って媚薬の入った小瓶を私の唇にふにっと押し付けた。やだやだと口を固く閉じたまま首を横に振る。でもそんな私に彼はまるで悪魔のような美しい笑みを浮かべた。突然ある考えがよぎって、私はハッとしながら目を見開いた。

 「まっ、まさか……私にあの夜の復讐をしようとして……」

 「復讐?……そうだな。そういう響きも悪くないが、ちょっと違うかな」

 小さく笑うと、まるで甘えるように鼻同士を擦り合わせて私の唇に囁いた。

 「ほら、逢莉……口を開けて」

 彼の指先が口を割らせようと口内に入り込もうとする。歯を食いしばって固く拒んだ。彼からはなぜか無駄にすごい色気が漂ってきて、脅されているのに、なぜか誘惑されているような変な気もしてくる。

 「随分と聞き分けが悪いな。勝手に許可もなく人の飲み物に変な液体を入れたのは誰だ?ん?」

 彼はククっと小さく笑いながら、まるで小さな子供にでも諭すような口調で私に問う。もう逃げ場がないと悟った私は、ガクッと床に跪くと彼を涙目でうるうると見上げた。

 「ご、ごめんなさい!!本当は、なんて最低なことをしたんだろうって自分でも何度も後悔してて………なっ、何度も謝ろうと思ったのっ!で、でも、何て思われるんだろうって怖くなって、なかなか言い出せなくて……」

 私は彼に許しを請うように両手を組み合わせた。

 「本当にごめんなさい!!もう二度としません!!約束します!!」

 彼の前に跪いて必死になって拝み倒す。そんな私に彼は一瞬驚いたように目を見開くものの、急にふっと表情を和らげると、私の頬を指先で愛しそうに撫でた。
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