恋と首輪
過去


「じゃあ、俺は邪魔だろうから席を外すよ、ゆっくり話し合いなさい。」


会長と、南雲が部屋を出たことで、部屋は沈黙に包まれる。

「…みゆ…どうゆうことだよ…」
さっきから主人の表情が、今まで見たこともない怖い顔をしている。
そりゃそうか。

「すみません、蓮様。今まで身分を偽ってて」
「…ほんとなのか?宝谷財閥の令嬢ってこと」
「はい。現会長の宝谷の娘が私です。訳あって、公表はしてないですけど。」
「でも、苗字は」
「私は死んだ母の苗字で名乗っているので…」
兄は宝谷のままだが、私だけは母の苗字、月宮を名乗っている。
母を忘れないように。

「……はあ、婚約って何?俺そうゆうの興味ないって1番知ってるよね?みゆも俺と同じ考えなんじゃねーのかよ。」
「はい、私も蓮様と同じ考えです。愛なんて微塵も興味はない。」
「じゃあなんで…」

「私には蓮様が必要だからです。」

私は、立ち上がり、顔が強張っている主人の隣に腰を下ろした。
私を見た主人の目は、今まで見たことないほど怖い目をしていた。

「私を愛してくれなくてもいい、ただ私のそばにいてくれれば。」
「……ッ、」

私は、彼が必要だから。
どんな手段であっても、私は彼を手に入れる。


「私と結婚してください、蓮様」
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