江戸恋日記
恋は突然
ある日、私は買い出しのため、近くの八百屋へ向かっていた。
少女は不穏な視線を感じていた。
この通りにはあまり人がいないはずなのに、さっきから着いてくる影があった。
少女は怖くなって、駆け足をし始めたが、距離は狭まるばかりだった。
少女は涙目になり、身体を震わせた。
私、殺されるの?それとも何か変なことをされるの?怖い....とても怖い.....。
もう疲れて、走るのを諦めようと思った時、前から人がでてきた。
前からできてたのは髪を高く結った侍だった。背が高く、キリッとした目、サラサラな黒髪。
私はその侍の腕をとっさに掴んだ。
「誰かに...誰かに追われているの...助けて...」
小さく震える少女の声に侍は状況を把握し、少女を片腕で抱きしめ、もう片腕で腰にある刀を抜いた。
そして、少しの時間待つと、その影は消えていった。
「もう大丈夫だ。顔を上げなさい」
少女は顔をあげ、侍の顔を見た。少女は安心し、涙を流した。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます。私、貴方が居なかったら今頃...」
侍は手拭をだし、少女の涙を拭った。
「昼間だろうと女性がひとりで出歩いてはならぬ。わかったなら今日はもう帰りなさい」
そう言って侍は少女の頭に手を置いた。
少女はこくりと頷き、侍に背を向けた。
少女は少し歩いたところでまた振り返った。
侍は優しい笑顔で微笑んだ。
ああ...。なんて素敵な人なの....
お母さん、私あのお方となら.......
私、結婚しても.....
もう桜の季節だと言わんばかりに、少女の視界の中には桃色の花が舞っていた。
ー少女の日記(7/3)ー
ねえ、 お侍さん。
私は貴方に恋をしてしまいました。
あのとき私を守ってくれたこと、私のために刀を抜いてくれたこと、私に優しく微笑んでくれたこと、私はとても嬉しかったです。
ねえ、お侍さん。
私達はもう一度会えるでしょうか?
会いたいです。貴方の優しい笑顔をまた見たいです。
また、会える。
そう信じておきます。
お侍さん。
大好きです。